チャイナ・リスクとは、共産主義政権において資本主義理念導入という矛盾した中国特有のリスクと理解すべきか。中国に投資するリスクを経済面から見た場合に使われるみたいだが、今回は、それに「反日デモ」も加わってしまったのだ。12日放送のTV東京「ガイアの夜明け」を観ていたら、中国も中々難しい舵取りを迫られている事に気付かされた。
中国における内陸部の農村と上海などの都市部の所得格差、所謂、貧富の格差は、想像以上に深刻であるようだ。公式には3倍程度の格差であると発表されていたが、(「ガイアの夜明け」からの情報によると)実際には20倍以上の格差が付いているみたいだ。農民たちは、現金収入を得るために都市部への「出稼ぎ」を余儀なくされており、しかも、そうした出稼ぎによる人口が1億人にも上るというのは驚きだ。そして、彼らの賃金は、都市部の一般サラリーマンに比べても低賃金なのである。 成るほど、これでは「反日デモ」でウサ晴らしをしたくなるのも当然か?と思えてくる。
現在の中国は、ご存知の通り、好調な経済発展を遂げている。そのような背景から海外からの投資も積極的であって、北京オリンピックや上海万博を控えて不動産投資に資金が流れている模様だ。それは、主に分譲マンションやオフィスを購入して賃貸し、値段が上がれば売却するという、日本のバブル時代を彷彿とする手法がとられているが、当然ながら、一般の市民が買える販売価格ではない。それらを購入しているのは、海外投資家や、中国でも成功した人たちに限られる。(番組では温州人という、商売上手な人たちを紹介していたが、それは、共産主義体制の中でも独自の生産方法で成功したらしく、
例として、温州地区でのライター生産の世界シェアは70%であると紹介していた。)
中国への不動産投資などが海外の投資家によって過熱している原因の一つは、安いレートに固定されたままの「人民元」の存在が挙げられるだろう。中国政府は、近い生来、人民元切り上げをせざるを得ず、人民元で投資しておけば、何もしなくても為替利益を得る事が出来るのだ。それに加えて不動産が値上がりすれば言う事なしという状態になる。個人的には、こうした不動産投資に対する印象が悪いのだが、人民元切り上げに関しては「投資対象」として面白いのではないかと考える。
このように農村と都市部との所得格差の他に中国人の成功者が存在し、中国における貧富の格差をさらに複雑なものとしている。日本でも所得格差は当然存在するが、それが共産主義の下となると、人民の間で「疑問や不満」が生じても不思議ではない。一般の市民は、発展する上海の高層マンションを見上げながら溜息をつくしかないからだ。こうした問題を端的に表しているのが中国の公務員による汚職の増加である。温州人のような事業に成功した者に比べれば、公務員の収入は当然ながら低いから汚職事件が後を絶たないのだ。
以上の点から、中国政府にとって最大の問題は、やはり、こうした貧富の格差に違いない。「反日デモ」が文字通り日本の批判に向けられている間は安心だが、人民の間では確実にに政治体制への「不満」が生じつつあると感じられる。そうした不満を開放するには平和的にせよ、天安門事件のように学生や民衆が蜂起するにせよ、結局は、矛盾した政策を採る共産党政権が倒れなければ解決しないように思われる。
あとがき
何か、タイトルの「チャイナ・リスク」から離れてしまいました。これでは中国政府にとってのリスクですね。でも、現実に「反日デモ」を目にしたら、「天安門の再来」の可能性はゼロでは無いような気がします。これが、中国に進出している日本企業にとっては、チャイナ・リスクの一つに数えられるのではないでしょうか?