中国政府の取り締まり強化により、香港で「教科書問題」に関連して30分程デモが行われたほかは、心配された4日も「反日デモ」は行われませんでした。しかし、中国では、学生を中心にした若者の間では「反日感情」が燻ぶっているようです。また、今年が終戦から60年という事もあり、「抗日」記念日がめじろ押しの現状では、問題解決とまでは言えないようです。
去ログでも述べていますが、中国政府は、一連の「反日デモ」の責任を日本側に押し付けて未だに「謝罪」を行っていません。この事は、国際的にも批判されているところですが、結局のところ「反日デモ」の取り締まり強化は、治安問題を疑われた中国のメンツの問題と、デモが民主化要求に変化する事への恐れからの対策であると考えるほか無いでしょう。
・・・確かに中国政府は、日本に対して「謝罪」こそしませんが、日中の経済的な役割の重要性を国民に説明し、デモへの不参加を呼びかけましたし、今回も徹底的に「反日デモ」の封じ込めに成功しました。しかし、中国の外交系の大学でのデモ不参加を要請された学生の「愛国心をどのように表現するのか?」「日本ではデモが大きく報道されているが、中国で報道されないのは何故か?」という発言を聞く限りでは、「反日感情」が依然として燻ぶっていると共に、現体制への疑問も生じている事が伺えた。
中国国民の「反日感情」を是正するには、「愛国教育」という名の「反日教育」を見直さなければならない。しかし、原因が判っていても日本政府にはどうすることも出来ないのだ・・・本当に日中関係が重要であると考えるならば、中国政府が対策を取るべきである。中国から「反日教育」がなくならない限り、「反日感情」が収まる事は無く、暴力的な「反日デモ」が再発するだろう。そして、その場合でも責任を日本側に押し付けるに違いない。
中国共産党と国民党による「歴史的会談」については前回のブログで簡単に触れた。また、朝日新聞は、この件に関して社説で次のように述べている。「人民大会堂を訪れた連氏ら一行を、胡氏は満面の笑みで迎え、握手を交わした。台湾独立の動きは武力で抑え込む。そんな反国家分裂法の物騒なイメージで台湾海峡の空気は緊張していた。それをぐっと和らげる効果があったことは間違いない。 民進党政権のもとでぎくしゃくした大陸関係を立て直せるのは国民党しかない。連氏がこの歴史的な訪中に込めたメッセージだろう。 人民大会堂での握手は、離れようとする台湾を引き戻した中国指導部の成果であり、胡氏にとっても大きな得点を挙げたといえる。」
・・・私には、朝日新聞の社説からは、中国共産党の立場を代弁してしる印象が強く感じられる。確かに「反国家分裂法」の海外からの批判を和らげる効果は否定しないが、民主化された台湾国民の感情を考えれば、台湾海峡の緊張は増す可能性があるのではないかと思われる。つまり、今回の国民党の判断が、返って「台湾独立」に火を付けてしまうのではないかと心配される。・・・物事は何らかのキッカケで大きく動いてしまうものなのだ。
今回も「反日デモ」は中国政府によって抑えられたが、その民衆の不満のマグマははけ口を求め大きくなるに違いない。恐らく、次の焦点は7/7の盧溝橋事件の日か、8/15終戦記念日における小泉首相の靖国参拝になるだろう。中国政府が「謝罪」しない点から考えれば、中国側の記念日での「反日デモ」再発は考えにくいから、やはり、終戦記念日での靖国参拝の有無が焦点になるのではないか?もし、首相の参拝による「反日デモ」再発であるならば、中国政府はデモを煽る立場に変化し、デモの責任が日本側にあるという従来の主張を正当化するアピールをするだろう。
・・・先月4日に台湾の国会議員が靖国に参拝したという事実がある。それは「反国家分裂法」にたいする抗議の意思表示なのだが、深読みすれば、日本が近隣諸国に説明している靖国参拝の「不戦の誓い」という意味を理解しているが、「外交カード」としては外せないのだ。その意味では、靖国参拝を必要以上に煽り、中国や韓国に靖国問題を外交カードとして使わせる原因となった日本の報道機関の責任は重いと言わざるを得ない。
あとがき
中国、台湾、北朝鮮と東アジアの情勢の変化は目まぐるしい・・・その何れにも関係する日本の立場も微妙である。しかし、よく眺めれば中国にも同様のことがいえる気がする。日本の報道は、北朝鮮の核問題に眼を奪われがちであるが、私には台湾の方が「東アジアの火薬庫」になるのではないかと感じている。台湾の帰趨によっては、日本は中国と東シナ海で対立する事になるだろう。